研究概要 |
光造形法は,従来多数の工程を要した複雑な形状でも簡単な造形プロセスにより成形できる新しい加工方法である.積層による成形は,滑らかな曲面の模型も表面に段差が生じ,表面粗さを低下させる原因であり,光造形法の利用上の一つの障害となっている.申請者は,引き上げ照射法を提案し,斜面の平均粗さが改善されることを確認した.本研究は,従来段差の生じていた光造形模型を,段差のない滑らかな立体模型として造形する基礎理論を構築し,新しい光造形プロセスを開発することを目的としている.引き上げ照射時の樹脂界面の物理特性を明らかにし,界面制御をうまく行なうことにより,すべての傾斜角で表面粗さが向上し,2次加工の必要ない立体模型が実現できることが期待される.本年度は、光造形法に用いる感光性樹脂の界面現象を調べ、界面現象のモデル化を行ない、熱による界面制御の可能性について検討した. (1)界面における物理諸特定の測定:光造形法に用いられる感光性樹脂に対して、表面張力計と粘度計を用いて、樹脂温度の違いによる表面張力および粘度の特性変化の測定を行った。感光性樹脂の通常の使用温度範囲と考えられる常温から70度までの温度に対して測定を行い、温度上昇に対して表面張力と粘度の低下が観察された。表面張力は温度上昇に対して一次関数的な減少を示し、粘度は逆比例的な関係を示した。 (2)立体造形性の検討:界面における雰囲気を変えて造形した場合の,樹脂の流動性の程度を調べるために、ハニカム形状のセル構造体模型を用いて樹脂の流出量を測定した。その結果、温度上昇に対して指数関数的な流出量の増加が観察された。 (3)界面現象のモデル化:感光性樹脂がニュートン流体の挙動を示すと仮定して、温度雰囲気の違いにより表面張力、粘度が影響を与える粘性流体の過渡特性,定常特性の界面現象のモデル化の関係式を導出した。
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