研究概要 |
紫外光を照射して気体を励起させ,表面改質する手法を提案・実現するのが本研究の目的である.そのため,種々の雰囲気でセラミックスに紫外光,すなわち193nmエキシマレーザ光を照射した.その結果,窒化ケイ素では突起が発生した.また,参照材料として使用したアルミナでは,照射を重ねるに従って表面が平滑化されることが認められた.これはレーザ照射による蒸発・溶融物が再付着しながら平滑化していくもので,セラミックスの封孔処理として適用できる可能性があることを,放電試験により確認した. 一方,水は網目構造を持つが,網の隙間が大きい.従って,隙間に気体を溶存させればマイクロチャンバとしての働きを期待できる.このように水を一種の雰囲気としてとらえ,水中に溶存させた酸素量を制御してエキシマレーザ光を各種セラミックスに照射した.窒化ケイ素では,照射条件を選択することにより表面をアブレーションさせることなく酸化できることがわかった.このようにして作製した窒化ケイ素試料を,試作研磨装置で引っ掻くと酸化層を有する部分のみ容易に研磨できる可能性があることがわかった.今後,光照射と研磨とを一体化させて,研磨の容易さを総合的に検討する必要がある. 以上の結果が得られたので,高温の水と反応する性質があるセレン化亜鉛を試料として水中でエキシマレーザ光を照射した.その結果,窒化ケイ素の場合と類似するが,エネルギー密度を適度にすることで,照射面を選択的に除去できることを見いだした.この結果は,立方晶窒化ホウ素のように硬さが大きく加工が困難な物質の新しい加工に適用できる可能性があり,本研究での大きな収穫である.
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