研究概要 |
健常者に障害者や高齢者のおかれた環境や状況を仮想的に体験させることができる車いす体験システムを試作し,それを利用してさまざまな実験と検討を行っている.平成7年度では,VR環境での空間認知特性と荷重計測による既知の困難姿勢推定を中心に行った. 仮想障害体験システム開発の第一段階として人工現実感の応用の一つである車いす体験を取り上げ,仮想空間内の移動システムを試作し,空間認知特性の調査について行った.結果としては本手法による距離の認知は視覚や聴覚と比べて一般に難しい.知覚される距離の長さは基準とする距離に比べて長くなるほど過小視する傾向がある,方位の評定では,呈示方位が小さいところで角度を過大視する傾向があるなどがわかった.本システムによる実験では,まだ仮想環境の描画速度が十分でない.限られた運動しか行えないの問題点があることがわかった. 障害を持つ状況を十分に反映した荷重計測まで含めた体験システムの構築については,基礎的な検討を行い,障害状況によって力学センサーの取り付け位置の決定及び荷重力の測定と分析を行った.力覚センサーによる荷重計測により困難姿勢の検出において,まず,下肢障害が引き起こす既知の困難姿勢について,特に車いすの足乗せ,座面,背もたれの荷重分布を解析した.その結果から困難姿勢を認識できる力覚センサーの配置,仕様を検討した.ここでは,前屈みと振り返しを対象としていたが,今後は,これまでの車いす体験に下肢障害が引き起こす困難姿勢を実時間で検出し,呈示するシステムに付加する予定である.
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