研究概要 |
本研究の目的は,木質材料にフェノール樹脂を注入し無酸素雰囲気中で焼成して得られる新しい多孔質炭素材料「ウッドセラミックス」のトライボロジー特性を体系的に解明し,摺動部材としての応用の可能性を明らかにすることにある.本年度は,自動車の湿式クラッチ材料としてのウッドセラミックスの適用の可能性を明らかにすることを目的として,ATF潤滑下において湿式クラッチを模擬したウッドセラミックスの摩擦試験を行った.実験に用いたウッドセラミックスは,無酸素雰囲気中で,400℃,600℃,800℃で炭化焼成したものである.得られた結果は,以下の通りである. (1)いずれのウッドセラミックスも,0.7m/s〜7m/sの幅広いすべり速度において,摩擦係数が0.15程度の一定の値を示し,湿式クラッチ材に好適な摩擦係数を有している. (2)いずれのウッドセラミックスも,すべり距離90kmにおいても摩擦係数の低下がみられず,安定した摩擦特性を有している. (3)いずれのウッドセラミックスも,比摩耗量が10^<-10>mm^2/N以下の低い値を示し,極めて耐摩耗性に優れている. (4)いずれのウッドセラミックスも,接触圧力を現行のクラッチの3倍に相当する値(3MPa)に増加させても焼き付きや激しい摩耗を生じず,耐圧性に優れている. (5)ウッドセラミックスは,自動車の高圧下で使用される次世代湿式クラッチ材料として,実用化の可能性を有している.
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