本研究の目的は、木質材料にフェノール樹脂を注入し無酸素雰囲気中で焼成して得られる新しい多孔質炭素材料「ウッドセラミックス」のトライボロジー特性を体系的に解明し、摺動部材としての応用の可能性を明らかにすることにある。 平成7年度の研究では、ウッドセラミックスの摩擦係数及び比摩耗量は、炭化温度の増加とともに急激に減少すること、ウッドセラミックスの摩擦係数及び比摩耗量は、大気中無潤滑、基油含浸、水中の各条件下において低い良好な値を示すことなどを明らかにした。 平成8年度の研究では、ウッドセラミックスを軸受材に用いることにより、完全無潤滑タイプの直動すべり軸受を構築することができること、同軸受は静摩擦係数と動摩擦係数の差が小さく摩擦音の抑制効果に優れることなどを明らかにした。 平成9年度の研究では、ATF潤滑下において湿式クラッチを模擬したウッドセラミックスの摩擦試験を行い、接触圧力を現行のクラッチの3倍に増加させても焼き付きや激しい摩耗を生じず耐圧性に優れていること、ウッドセラミックスは、自動車の高圧下で使用される次世代湿式クラッチ材料として実用化の可能性を有していることなどを明らかにした。
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