研究概要 |
電気自動車の加速性能と制動エネルギーの回生の向上を目的に、その駆動系に無段変速機を採用することを考え、その基本性能試験を行うため、車両本体200kg、バッテリ質量180kg(定格電圧6VX6=36V,最大出力電流150A、T105タイプの鉛酸バッテリ)、直巻2.2kW電動モータ駆動の小形電気車両にトラクションドライブ式ハーフトロイダル型無段変速機を塔載し、その性能試験をおこなった。無段変速機は最大入力トルク40N・m、最大回転数3000rpm,変速範囲0.4〜2.5で設計されたものである。 (1)伝達効率の試験: 入力回転数1500rpmにおいて、入力トルク10〜40N・mの範囲で、速度の伝達効率95%、トルクの伝達効率78%がえられた。トルクの伝達効率の低い理由はハーフトロイダル無段変速機のパワーローラ支持軸受と入出力ディスクを支持する2ケのアンギュラ玉軸受が全伝達トルクの20%を浪費していることが理論的にもわかっており、当初から予想していたものである。効率は必ずしも高くはないが、試作した無段変速機は騒音もなく安定してトルクを伝達できることを確認した。 (2)ねじ制御式の変速サーボ機構の同期試験: 1対のパワーローラの傾角を等しくするサーボ機構の作動確認を行った。両者の変速ユニットの動きを角時計を取り付け、そのステップ応答を調べた結果、変速1.0〜2.0を0.5s以内に同期崩を起こす事なく制御できていることがわかった。この成果は、本無段変速機を車両に塔載しても問題がないとの結論をえた。 (3)トラクション油中の気泡のトラクション部への流入の可視化試験: トラクション油の消泡性は通常の作動油に比べ低いため細かな気泡が沢山含まれる。トラクション部のヘルツ圧力は2GPaと大変高いため、この気泡の流体工学的挙動と熱力学的挙動を明らかにすることは重要な課題である。平成7年度は、狭い透き間を滑る軸とアクリル板からなる軸受を作製し、気泡の隙間部の通過の様子を高速ビデオを用いて観察した。その結果、隙間の大きさにあった気泡は容易に通過すること、隙間より大きな半径を持つ気泡は転がり方向と直角方向に逃げていくことが観察された。今後、隙間を通過する気泡の形状変化(体積変化)の有無をより詳細に調べ、断熱圧縮現象の有無を検討することにしている。
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