本研究で開発したハーフトロイダル形無段変速機(CVT)を2.2kWの電気駆動車両に搭載し、その加速性能試験と消費電力の実測を行った。CVTは最大入力トルク40N・m、回転数3000rpm、変速範囲0.4〜2.5で設計されたもので、これをDC36V、150A最大入力可能な直巻電動機で駆動し、CVT出力は1:12.5の最終差動減速機を介して車軸に伝達されるものとした。平成8年度は、モータの動作点と車両運動の適合をはかるためCVTの変速制御系の電子回路の設計センサ類の実装に重点を置き、車両の運動性能の測定に全力を投入した。走行試験により、CVTを搭載することにより、これまでの固定減速では時速20km/hが限界であったものが、30km/hまで可能となるとともに、発進時の消費電流が固定減速では170Aであったものが120Aまで低減でき、ほぼ同一の加速性能が得られることがわかり、CVTの搭載の意義があることがわかった。また、トラクションドライブ用油は高温になると消泡性がわるくなり細かな気泡が無数に混在した状態になる。この気泡が含有した油がトラクション面に流入した場合、断熱圧縮による油温の局所的上昇が考えれるので、本研究で購入した高速度カメラにより、隙間管理された転がり滑り面を通る流体の可視化を行った。その結果、隙間より大きな気泡はトラクション面を避けるように殆ど流れ、隙間相当の粒径をもつ気泡は楕円状に変形しながら低い確率で最小隙間部を通過することが明瞭に観察できた。即ち細かな気泡の大部分も高圧さなる最小隙間部を避けるように流れることがわかり、実際のトラクションドライブ装置で、大きな温度上昇が無いことや、エロ-ジョンがないことの裏付けが得られた。
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