本年度は研究の最終年度に相当するため、主に前年度までに確立された技術を今後発展させるために必要な方策についての検討を行った。 まず、前年度の最終段階で、送光部光学系の剛結合による欠点を光ファイバの導入によって解消することが可能であることが示されたが、その際、光ファイバの端面加工に高度な熟練を要したために、製作には予想をはるかに超える時間がかかった。今後、同様の装置を製作するにあたり、この加工法について何らかの方策を立てることが実用性の向上のためには欠くことができない。現行では、コア径2μm、外径50μmのシングルモードファイバ側面をサンドペ-パ-で研磨する方法を取っており、すべて経験に頼った手作業で行っていたが、これを専用ジグの導入により規格化された部品が製作できるようなプロセスを検討した。 また、データ処理の段階で、通常のレーザ計測で避けることのできないショットノイズなどによる不良サンプルを棄却検定する必要があるが、通常のLDVで採用されている確率密度分布関数の分散値を基準にする方法を採用すると、乱流境界層で典型的な突発的な速度変動を無効なデータとして排除してしまう欠点が指摘された。これは、乱流せん断応力の確率密度分布が、データ棄却検定のよりどころとなる正規分布から著しく異なっているためで、有効なデータ検知のためにはLDVの信号処理にさらに工夫を加える必要があることが明らかになった。本研究では、分散データを取り扱う限りはこの問題を解決することができないと考え、アナログ信号を検出するパイロットプローブの併用を検討の対象とした。実際に用いたのは、壁面に空けた直径5mm程度の小孔から、熱線風速計のセンサをV字型に曲げたものによって壁面のごく近傍の流れを検知する方法で、これにより壁面せん断応力に特有な、歪みの大きい確率密度分布が検出可能であることが示された。
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