本研究でベースとした測定原理についてはすでに過去の研究において確認されていたので、本研究期間中にはまず普遍性の高い流れ場への適用を通じた信頼性の評価を行った。対象とした流れ場は過去の実験結果が豊富でDNSデータベースも良く整備されている二次元チャネル乱流で、レイノルズ数を変化させながら主に乱流統計量の計測を行った。実験に用いた流路はアスペクト比32のチャネル(幅2H=20mm、全長2m)で、壁面せん断応力の計測点において、流れ方向の壁面静圧と熱線風速計による速度分布の測定により、十分発達した乱流となっていることを確認した。既存の信頼性の高いDNSとの比較を考慮した、チャネル幅と平均速度に基づくレイノルズ数Re=6600で主に実験を行った。 時間平均摩擦係数の値は、一般に知られる実験結果から定まる相関値およびDNSによる結果と1%以内で一致した。また、壁面せん断応力の乱流統計量に関しても、確立密度関数の分布、分散、分布の歪み度ならびに尖り度についてDNSその他の結果との比較において良好な一致を示した。 研究2年度以降は、計測器全体の安定性を向上させる目的で主に光ファイバーを用いた送光部光学系の開発に時間を費やした。干渉縞を形成させる光源となる幅1μm間隔10μmの2本のスリットに2本のレーザービームを照射するために2本の平行に設置したファイバー端のコア間隔を20μmとするような端面形状が必要であったが、そのための加工は困難を極め、研究期間のほとんどをそれに費やした。しかし、その結果完成した装置によって測定の安定性は飛躍的に向上し、なおかつ結果の質も向上した。 また、統計データ処理の過程で行う不良データの棄却検定の際に有効信号の判定を行うためのアナログ式パイロットセンサーの導入について検討した。壁面の微小な孔からV字型に加工した熱線センサーを露出させる方法を考案し、これが従来この種の計測に用いられてきたホットフイルムセンサーに比較して特に優れていることがわかった。
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