研究概要 |
東京大学では,真直な形状を記憶させた形状記憶合金のパイプと,湾曲した形状を記憶させた形状記憶合金のパイプを組み合わせ,それらの温度を制御する事によって,医師の指令により屈曲して,方向や位置を変化させることができる能動鉗子を,数回の試作と実験を経て開発した。この能動鉗子は,約45度の湾曲範囲を持ち,従来の直線形状の鉗子では得られないような操作範囲や姿勢を得ることに成功した。次に,この能動鉗子と医療用ロボットAESOP1000によって構成される腹腔鏡下外科手術用スレーブを,術者が操作しやすいよう,Polhemus Sensorや直線型ポテンショメータや小型振動子を用いることで機構的拘束が自由になっている腹腔鏡下外科手術用マスターによって操作する,ロボットシステムの設計・製作を行ない,基礎実験を行なった。また,術者とロボットとのマン・マシン・インターフェースの改善として,臓器の動きを術者に感じさせないモーション・キャンセラ・システムの概念の下,Active Prismを用いてビデオカメラからの得られる臓器の動きを画面上で静止させるビジュアル・スタビライゼーションと,鉗子などの手術器具の動きを画面上で術者の意図するように動かすモーション・スタビライゼーションの設計を行ない,基礎実験を行なった。 鹿児島大学では、形状記憶合金の制御法として、直接通電によるジュール熱加熱法を用い、高い応答性を有する能動鉗子の試作を目的とした。試作した能動鉗子の構造は、直径2mmの形状記憶合金パイプ4本を並列に並べたもので、この内の2本は屈曲形状を、残り2本は直線形状を記憶している。これらの形状記憶合金パイプを交互に加熱冷却することにより、鉗子が能動的に屈曲・伸展を行う。加熱は、高速加熱を実現するために直接通電法により行い、冷却は、形状記憶合金パイプ中に冷水を流すことにより行った。この構造と動作原理により、立ち上がり時間3-4秒で屈曲伸展を行う能動鉗子を実現することができた。また、屈曲時の内側と外側の形状記憶合金パイプの局率半径の違いによる問題を解決するために、屈曲側の形状記憶合金にスライド機構を取り付け、約40度の屈曲角を得ることができた。
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