研究概要 |
現在,バイオ,医療,生化学などの分野では,化学分析,合成装置のマイクロ化が期待されており,筆者らはマイクロ集積流体システム(Micro Integrated Fluid System:MIFS)を提案し,研究を行ってきた.MIFSの基本概念は,シリコンプロセスで製作するセンサ,演算回路を含む基盤上に,マイクロ光造形法を用いて立体的で広範な容量に対応した流体回路部を一体成型するものである.近年,MIFSの概念を一般化学反応からさらに広げて,生化学ICへと発展させている. 今回,細胞を用いない無細胞タンパク合成を目的とした生化学反応の検出及び制御を行うため,光センサ,増幅回路を含むシリコン基盤上に,マイクロ光造形法を用いてリアクタ,流路を設計し,光センサ型マイクロリアクタを製作した.さらに,タンパクの合成検出を確立するため,同様の化学発光反応の1つであるルミノール反応を用いて,化学反応のリアルタイム制御実験を行った.この実験結果から,フィードバック制御システムの有効性を実証でき,光センサ型マイクロリアクタシステムでかなり広範囲な反応を制御できることを確認した.また細胞外タンパク合成の材料としてホタルの発光酵素であるルシフェラーゼを用いて検出実験を行った.この実験では,微小空間における生化学反応を実現でき,また,極微量の生化学反応を検出することに成功した.これより,フィードバック反応制御システムがタンパク合成などの生化学反応に対しても有効であることを確認できた.
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