研究概要 |
弾性表面波ジャイロスコープの基本原理に基づき,駆動周波数10MHzの弾性表面波ジャイロスコープを試作した.入出力電極のアドミタンス特性の検証,圧電基板上の弾性表面波の分布状況の観察など基礎実験を行った.結果,駆動電極,検出電極と反射器の位置関係に不都合があることがわかった.反射器が駆動波を強く反射するように反射器を配置すると,その反射器が検出波を打ち消し,逆に検出波を強く反射するように反射器を配置すると,駆動波が打ち消される.構造上,回転信号の検出が困難になっているというものである. このような問題に対し,電極パターン,それらの電極の配置,弾性表面波の励起方法,信号検出などを工夫した新たな弾性表面波ジャイロスコープを考案した.(1)弾性表面波の進行波を駆動波する弾性表面波ジャイロスコープ.(2)2周波数で弾性表面波を励起する弾性表面波ジャイロスコープ.(3)駆動電極と検出電極の配置が直交する弾性表面波ジャイロスコープの以上3タイプである.また,(2),(3)については設計,試作を行った.励起する弾性表面波のバルク波を抑えるため,駆動周波数を50MHzとしたが,同時に素子の小型化の試みともなった. また,圧電基板上IDTの等価回路法による解析を基にした,弾性表面波ジャイロスコープの設計を支援するシミュレーションプログラムも制作した.これにより,設計段階で入出力電極のアドミタンス特性や電圧電送特性,反射器の反射特性などの情報を知ることができる.これを設計にフィードバックし,より仕様に近い弾性表面波ジャイロスコープを設計できるようになった.
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