研究課題
基盤研究(A)
河川空間は、これまで水理学的あるいは土木工学的な効率を重点に開発が行われ、洪水対策など一元的に捉えられてきたため、水辺空間は自然的調和を失い、多くの動物、植物さらには人間からも遠い存在となりつつある。河川空間を動植物の生活空間に戻し、また人間の安らぎの場としてのアメニティ空間を創造することが要求されている。本研究は、生態系に配慮したコンクリートの性能および施工法の開発を目的とした。これまで中小河川の護岸に用いられてきた、コンクリートによる河道の斜面全面被覆方式から、蛇行から蛇行への変曲点のみをコンクリートブロックなどでfix pointとする方式あるいは淵となる屈曲部のみをL形、T形の透水型コンクリートで護岸する方式など、多自然型構造に適する新しいコンクリート性能の開発と使用法、水辺空間における洪水空間と生態空間の共生、環境林、植生のあり方を明らかにしている。コンクリートの性能については、自然に近い透水性コンクリートに着目し、耐久性と構造体に必要な強度を確保し、実際に実用化できる製造方法を確立した。これによってギャップグレイドの配合による方法を主体にして製造した透水型コンクリートの厳しい環境下に使用できる耐凍害性のコンクリートを造ることができた。一方、河川空間におけるこれらの実際の使用法を明らかにするため、これまで行ってきた護岸のモデル曝露実験およびフィールド実験を行い、ブロックによる土砂の流動、堆積などの水理学的性能を把握し、また洪水時における河道の安定性を確認している。さらに、コンクリートによるアルカリの流出、土中浸透、生態系、水質の変化についての経時変化を調査しその浄化作用について明らかにした。これら材料学的、水理的および生態学的な検討を行い、実用化のための確認を行った。今後さらに継続的な研究が必要と考えている。
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