研究課題
基盤研究(B)
平成7年度の研究により、1)露頭やボーリング調査の結果からクラックの実体を把握する一般的手法を確立し、2)クラック調査の結果から不連続性岩盤の浸透・拡散を評価する一般理論を構築した。本年はこれらに加えて、3)砂を使った異方性地盤の一次元の溶質分散実験を行い、不連続面の分散に及ぼす影響の定性的な評価を試みた。平成8年度の研究を要約すれば、以下の通りである。1)不連続性岩盤の透水・拡散に関する理論の整備:(a)不連続面を高密度にふくむ場合、それと等価な多孔質媒体を定義でき、透水係数、分散係数テンソルはクラックの幾何学量を内部変数として定式化できる。(b)数値シュミレーションによる結果は理論の結果と整合的であるが、汚染物質の分散に関する数値シュミレーションでは、解析領域の設定等に十分な配慮を怠ると、必ずしもよい結果は得られない。(c)不連続性岩盤の分散は、純粋にクラックの幾何学による部分と、動水勾配の平均値からのづれによる部分からなる。特にクラック密度が低いか、あるいは異方性が強い場合には、後者の効果が大きい。2)クラックの調査法とステオロジーの応用:(d)クラック調査の結果を使って3次元のクラックモデルを作成するには、ステオロジーに基礎を置く手法は極めて有効で、例えば、クラックテンソルは、調査から得られる情報から幾何統計的に推計でき、しかも十分な信頼性が確保できる。3)分散実験による検討:e)流下距離が長くなると、溶質のブレークスルーに要する時間は、分散理論による予測値より長くなることが、実験、数値シミュレーションで確認された。f)粒径の変化による流れの不連続は、その境界付近での流れの特異性を反映して、分散にも大きな影響を及ぼす。
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