斜面要因にみあう有効雨量の評価について、ロジットモデルを用い、平成7年度は時間雨量、連続雨量、実効雨量の単一降雨指標を用いた有効雨量を、平成8年度は時間雨量と実効雨量の複数降雨指標を用いた有効雨量の評価を行ってきた。以下に、本研究で得た成果をまとめる。 (1)今まで、多くの試験調査を必要としていた斜面の抵抗力評価をロジットモデルを分析手法として用いることにより、抵抗ポテンシャルとして入手可能なデータで表現することを可能にした(斜面要因モデル)。 (2)斜面要因モデルより、抵抗ポテンシャルに影響を与える要因(外力要因、抵抗力要因)の特定化、斜面の相対的な強度比較を可能にした。 抵抗ポテンシャルと雨量指標(単一の雨量指標)の比を要因としてロジットモデルを新たに構築することにより(雨量要因モデル)、崩壊確率を1つのものさしとして有効雨量を決定することができた。 (4)複数の降雨指標(時間雨量と実効雨量)による崩壊・非崩壊雨量の判別に、ロジットモデルによる判別線(LM線)が有効であることがわかった。 (5)抵抗ポテンシャルの大きさの違いによるLM線の特徴(傾き、切片)より、強度の高い斜面では、実効雨量の影響が大きいこと、脆弱な斜面では、時間雨量の影響が高いことがわかった。 (6)各斜面または管理斜面区間ごとの抵抗ポテンシャルの大きさにみあったLM線を求めることとにより、斜面要因、抵抗力にみあった時間雨量と実効雨量による斜面管理が可能であり、単一雨量指標よりも、複数の降雨指標を用いた有効雨量の方が実用的であることが得られた。
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