地方小都市では道路交通への依存度が極めて高いために、道路整備の良否が地域の活力を支配すると言ってもよく、地域の実状に応じたきめ細やかな道路ネットワークづくりが進められる必要がある。しかし、これまでに実施されてきた道路交通調査や、それに基ずく交通量解析予測手法は、広域的な幹線ネットワーク形成のための道路網計画に適しているが、人口10万人程度の地方小都市の道路網計画策定のためには必ずしも十分ではない。本研究で開発している手法の特徴の第1は、対象地域を含む広域地方圏のOD表と整合した形で、対象地域のOD表を推計できる点にあり、上位の広域交通計画との整合性が保証されるという利点を持つ。一方、交通量配分に関しては、対象地域を含む広域地方圏の配分(第1段階)と、それを対象地域のコードンラインで受けた詳細配分(第2段階)の二段階から配分手法を開発する点に研究の特色がある。平成7年度は、当初の計画に従ってモデル開発を中心に研究を進めた。得られた成果は以下のようにまとめることができる。(1)地方小都市の道路網計画の考え方に、いくつかの事例を整理することにより、従来の計画方法論の問題点の抽出を行い、道路網計画における交通流解析手法の位置づけについて考察した。(2)既存の観測リンク交通量によるOD推計手法を改良し、道路交通センサスによるOD表を地域のゾーニング規模に適したものに再構成するためのモデルを開発した。具体的には、対象地域の土地利用指標等を用いてOD表の簡略化推計を行い、さらにその結果を観測リンク交通量により修正するという手順である。(3)通過交通が支配的な幹線道路網を含む場合の交通量配分手法として、実務レベルで経験的に行われてきた二段階配分手法を改良した配分モデルを開発した。第1段階の地方広域権の交通量配分は、愛媛大学総合情報処理センターの大型計算機で計算し、その計算結果をパーソナルコンピュータで受けて、2段階目の配分計算を行うようなシステムを構築した。
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