脱窒菌を電極(陰極)表面に固定化した微生物固定電極に関して、固定化微生物の基質利用特性、電極への微生物固定化方法、固定化後の脱窒活性の安定性及び脱窒速度に及ぼす電極電流等の装置操作条件の影響について、装置設計のための基礎的検討を行った。その結果、以下の様な知見を得た。 1.貧栄養下にある土壌より集積した共試脱窒菌の最大比基質消費速度は、排水処理装置等で優先する脱窒菌に比べて小さかったが、基質親和性は高く、また脱窒過程の中間代謝産物である亜硝酸イオンをほとんど蓄積しなかった。 2.微生物固定電極の脱窒活性は通電開始初期に一時的に不安定になる場合がある。このような場合、適切な馴致期間(大略1ヶ月程度)をとることによって、通電操作のみによる安定した脱窒処理を行うことができ、また電極脱窒速度は電流値を変化させることによって制御することができる。 3.比表面積が大きく、また装置内混合にも優れている網目状電極を用いる場合、光硬化法を用いることによって均一でかつ安定した微生物固定化が可能である。 4.適切な操作条件を設定することによって、地下水中に共存する硫酸イオンはそのまま通過させ、同時に亜硝酸イオンの蓄積を抑えながら硝酸イオンのみを全て窒素ガスに還元除去することができる。 5.地下水中に存在する溶存酸素は陰極の水素生成効率を低下させるが、水質基準の10mg-N/L前後の硝酸イオン除去の場合、略20%前後の脱窒効率の低下を招くと考えられた。
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