研究概要 |
建築物における設備配管は,梁の下を通すと階高が高くなり、建築コストの面で好ましくないために,梁に開口を設けて配管することがよく行われる。しかし、梁に開口を設けると,耐力や変形性能の面で大きな問題を生じる。 本研究は,施工が簡単で,効果の大きい開口補強方法を開発することを目的とする。そして,この補強を使用する部材のせん断強度を算定するための実用的な設計式を導出する。実際の建物では,大きさの異なる複数の開口が千鳥状に並ぶこともあり得る。さらに,ヒンジ領域に使用し,塑性変形能力を要求される場合もある。これら種々の状況に対応できるように,構造規定,配筋詳細規定,施工要領などを含む設計規準を作成するのが最終目標である。 平成7年度は,基礎的実験・解析により,開口補強筋の定着についての知見を得た。平成8年度には,昨年度の実験・解析結果について,力学的性能,施工性能の両面から検討し,補強方法の改良点を見いだした。さらに,複数開口の影響,特に,大きさの異なる複数の開口が千鳥状に並ぶ場合の孔間の距離やならび角度なども考慮して,より実用的な開口補強方法をトラスモデルにもとづく塑性解析により模索した。このうちの有力候補について,有限要素法解析を行い,有効性を確認した。力学的性能と施工性を確かめるための実験も行った。孔間の距離やならび角度などは無限に可能性があるが,いくつかの典型的な場合に限定した。これは,塑性解析の結果をにらみながら工学的に判断した。普通強度コンクリートを用いた実験を名古屋工業大学で,高強度コンクリートを用いた実験を京都大学で行った。主筋,開口補強筋,せん断補強筋は,高強度のものを用いた。これは,梁開口でのせん断破壊を実現し,開口補強筋の定着の影響を明確にするためである。
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