研究概要 |
低酸素分圧下で溶融凝固処理(OCMG)したNd123超伝導体は高磁場下でY123超伝導体より高いJ_cを示す事が報告されているため、その線材化が期待されている。そこで本年度は繊維状Nd123超伝導体のOCMG処理について検討した。Nd_<1.18>Ba_<2.12>Cu_<3.09>O_x(1)、Nd_<1.25>Ba_<2.05>Cu_<3.10>O_x(2)前駆体繊維をNd,Ba,Cuの酢酸塩の均一なPVA水溶液から乾式紡糸により紡糸して作成した。得られた前駆体繊維を酸素中で仮焼し、0.1%O_2+Ar或いは1%0_2+Ar中で部分溶融凝固処理し、最後に酸素中で後処理した。熱処理後の繊維(1)及び繊維(2)のT_cはそれぞれ94.5Kと88.5Kであった。繊維(1)は急速に加熱して部分溶融凝固すると繊維中に空孔を発生するため、500℃/hで加熱した。熱処理条件を最適化する事で、繊維(1)、(2)でそれぞれJ_c=2.4x10^4A/cm^2と1.8x10^4A/cm^2(77K,0T)の最高値に達した。しかし繊維(2)の最適な熱処理条件の幅は狭くJ_cの再現性も乏しかった。高いJ_cを達成するためには前駆体繊維の組成をコントロールする事が鍵となった。繊維のJ_cの磁場依存性は酸素中の後処理条件や前駆体繊維の組成に依存し、繊維(1)のJ_cの磁場依存性はY123よりもよく77K,10Tで10^3A/cm^2以上を維持した。 最後に高温酸化物繊維の金属中への複合化を検討した。Al,In,Ag等をマトリックスとして、焼結したY123繊維を埋め込んだ。銀ペーストを塗布して酸素中で熱処理する事で超伝導特性の劣化のない機械的性質の優れた複合体を作製できた。
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