本研究は肺ガン誘発材料である「石綿」を用いず、石綿繊維補強と同等或いはそれ以上の耐久性(特に、低温環境下での耐久性;耐凍害性)を具備するセメント建材を新規に開発することを目的とした。研究の特色は、建材の多孔組織を緻密化し、成形時の水/セメント比を低減し結果的に組織を緻密化して吸水率を大幅に低減させ、機械的強度も向上させて低温耐久性の改善効果をねらう点である。特に、板状建材の表層部分(約1mm厚さ程度)の細孔径分布を炭酸ガス処理によって細孔内部に炭酸化物を析出させることによって調節する建材処理技術の確立も主な研究特色である。上述のセメント原料粉体を各種混和剤粉体と共に数千r.p.m.で回転する気流場中で相互粒子衝突させることによって球状で大きさが揃ったセメント建材用原料に変えて細密充填理論(Fuller則など)で適当な粒度配合を行い建材成形時の水/セメント比(W/C)を低減させることに成功した。同種原料配合系で高速気流衝撃場処理の有無で比較すると、無処理系の建材では(W/C=0.4程度)でも成形に適した可塑性が得られないが、処理系の建材では(W/C=0.2程度)でも十分に流動成形可能で養生条件を十分に施すことによって、建材内部でも未水和は回避でき、吸水率は無処理系の建材の約16〜18%に比べて約2程度にまで大幅に低減出来ることを実験的に明らかにした。従って、上述の様な高度の吸水率低減化新建材は、研究代表者の以前からの基礎研究で明らかにされている様に、極めて優れた耐凍害性を示す事が分かった。また、上述のもう一つの研究発想である炭酸ガス処理による建材表層部の細孔径分布の制御に適した具体的な処理条件を確立出来た。その結果、炭酸ガス処理建材は吸水率の低減効果と共に凍害促進細孔径の低減を可能にして、結果的に耐凍害性を大幅に向上させることに成功した。従って、これらの諸成果は幾つかの無機系材料或いは粉体の専門学会で発表・投稿を済ませた。また、これら諸成果は本国寒冷地でのセメントを主体とする無機建材(板材)の実際に利用可能な建材の製造に大きく貢献すると考えられる。
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