平成7年度と8年度の目的である建材用原料粉体の高緻密化は、高速気流中衝撃処理により球状高緻密粒子に改質することができた。新規合成した改質セメント原料を用いて作製した非石綿繊維強化セメント建材の吸水率は約4〜5%となり、従来の粉体混合手法で作製した建材の吸水率値15〜20%に比べて大幅な低減に成功した。その結果、得られた新建材の耐凍害性は大幅に向上した。平成9年度の目標である「試作建材の液/気相を用いた表面改質プロセスによる耐凍害性の改善」は、反応気体である炭酸ガス(2〜3気圧)で水或いは微粒炭酸マグネシウムサスペンジョンで湿潤させた建材を高圧容器中で約1時間、約60°C程度の加温状態で処理することにより、建材表面に高緻密な反応層を形成させることができた。その結果、例えばASTM法で規定する凍結融解試験600サイクル後でも建材内部からのイオン溶出が極めて効果的に阻止され、内部組織は緻密に維持され耐凍害性を大幅に向上させることに成功した。 本研究で対象とする「建材の凍害発生メカニズムの解明」の基礎的課題については、“建材内部での化学成分や結晶状態によって細孔内表面の水の凍結挙動がどの様に相違するか"に焦点を絞り検討した。組成及び結晶状態の異なる酸化物を対象に低温冷却DSC分析法で表面水の凍結開始温度と凝固エンタルピーを測定した。その結果、約6〜10nm程度の膜厚さの表面水はイオン結合性の低い固体表面や非晶質表面上ほど強固に束縛されて熱力学的に極めて安定して存在し、凍結し難いことが分かった。
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