研究概要 |
1.目的および方法 本研究は,補綴物自体を磁石で構成する可撤式クラウン・ブリッジへのFe-Pt磁石の応用を目的とし,試料を精密鋳造法によって作製し,磁気特性,表面粗さ,吸引力,結晶組織を追究する。 2.結果0.55at%-0.2at% 前年度の結果から,精密鋳造に使用する埋没材はチタベストCB,焼成温度は主に600℃とした。本系の基本組成であるFe-39.5%Pt合金にSiを単独添加した場合,表面粗さは改善されるが,磁気特性が低下する。そこで,Siに加え,焼入性を改善するNbを複合添加したところ,磁気特性が優れ,かつ,表面粗さが良好な試料を得た。これらを用い,円板状ならびにクラウンを想定したキャップ状の試料を作製し,吸引力の着磁方向依存性を測定した結果,4極着磁した円板状試料において1000gfを越える値が,また,円筒軸方向に2極着磁したキャップ状試料では600gfが得られた。これは,可撤式歯科補綴物の維持力として,充分臨床応用可能な値である。 3.平成9年度の計画 これまでの結果から,バルクFe-Pt系合金の高特性発現には結晶方位の制御が重要であると考えられる。そこで,鋳造時の応力等を利用して結晶粒を粗大化させて単結晶を作成し,結晶方位による磁気特性の相違を調べ,多様な磁石形態に対応し得る高性能磁石の実現を図る。また,着磁方法を検討して吸引力の向上を図り,臨床形態に近いキャップ状試料による実験を行なう。これらを総括し,論文として報告する。
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