研究概要 |
従来,歯科補綴の分野において実用されている既成の歯科用磁性アタッチメントは,臨床応用に関して多くの問題が提唱されている。研究代表者等は,これらの問題を解決するため,補綴物自体を磁石合金で構成し,磁性ステンレス鋼との間に作用する吸引力を利用する新しい方式による可撤式クラウン・ブリッジの機構を考案した。この方法は,本研究において発見され,高い磁気特性と非常に優れた耐食性を兼備するFe-Pt系合磁石を基礎として成り立つため,初め,本系合金の歯科精密鋳造法への対応の可能性,最適な組織と鋳造条件を求めた。次いで,臨床形態に近い円板ならびにクラウン状試料によって,吸引力を詳細に調べた。 その結果,歯科鋳造に対応した合金成分と組成ならびに着磁方法等が明らかになった。応用上重要な吸引力は,円板状試料において平均600gf,クラウン状試料において平均500gfを越える値が得られ,補綴学的に,本系合金の歯科応用が可能であることが示唆された。今後は,着磁方法ならびに機械的性質等を詳細に検討し,臨床応用を目指す。 他方,研究代表者などは,スパッタ法によって作製したFePt規則合金のエピタキシャル膜が,膜面垂直磁化膜となり,最高35M・GOeにおよぶ最大エネルギー積を示すことも見出した。 これらの結果は,諸学会において口頭発表し,論文として報告した。
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