研究概要 |
高融点金属箔を低融点金属箔で挟んだ不均一な中間層を用いて,低融点金属箔の融点直上で接合するPTLP(Partial Transient Liquid-Phase)法を確立した.この方法では,接合時に液相となる低融点金属と高融点金属との相互拡散による不均一層の均一化が起こり,低融点金属の液相は消失する。そのため,この方法では従来の活性金属を用いたろう付け法や固相接合法に比べて,接合温度を数百度低くすることができ,さらに得られた接合対は高温への適用が期待される.この接合方法では,低融点金属の液相は接合時に高融点金属とセラミックスとに挟まれた状態で存在するため,低融点金属液相のセラミックスに対する濡れ性の改善は,強固な接合体を得るための重要な因子となる.本研究では,低融点金属として用いる溶融銅のアルミナおよび窒化ケイ素セラミックスに対する濡れ性に及ぼすCr,Niおよび80Ni・20Cr合金の添加の影響を静滴法を用いて調査した.また、Cu/80Ni・20Cr/Cuの中間層を用いたPTLP法により、アルミナ及び窒化ケイ素セラミックス同志の接合を行い,接合体の強度と界面反応について調査した. 溶融銅のアルミナ及び窒化ケイ素セラミックスに対する濡れ性は、Crの添加により大幅に改善されることが明らかとなった.また,アルミナの場合は添加したCrは銅とアルミナの界面に凝集する傾向を示し,窒化ケイ素の場合はCu,Cr及びSiからなる反応層を形成していることが明かとなった. Cu/80Ni・20Cr/Cuの中間層を用いてPTLP接合したアルミナ接合体の中間層は均一化しており,低融点金属のCuは完全に消失していた.また、接合体の破壊はアルミナ側で生じており,平均強度及び強度のバラツキは無接合のアルミナ標準試料に匹敵する値が得られた.一方,アルミナと同様の中間層を用いてPTLP接合した窒化ケイ素の接合体では,破壊は中間層/窒化ケイ素界面で起こっており,十分な接合強度は得られなかった.これは,接合時に液相となる溶融銅中にCrが溶解することにより溶融銅と窒化ケイ素との濡れ性は改善されるが、中間層の均一化が不十分で,かつ中間層/窒化ケイ素界面に脆弱な化合物層が生成しているためであることが明かとなった.
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