研究概要 |
Nbを機能材料に使用する場合、高純度化を図る必要がある。粗Nb高純度化するには物理的および化学的精製法を組み合わせた一連の処理プロセスにより不純物成分を除去する必要があるが、化学的精製法の一つである溶融塩電解精製において塩化物およびフッ化物溶融塩を電解浴に用いて粗Nbを精製した場合、電解浴の違いによる不純物成分の精製挙動については不明な点が多い。そこで、本研究では塩化物浴およびフッ化物浴による溶融塩電解精製を行い、両手法によって粗NbからTa,WおよびMoなどの高融点金属不純物成分がどの程度除去できるかについて比較検討した。試料には純度99.9%(塩化物浴)および99.8%(フッ化物浴)の粗Nbを使用した。反応容器内をAr雰囲気下に保持し、実験温度まで昇温させた後、所定の条件で電解精製を行った。電解終了後は塩化物浴による電解では溶媒抽出法およびフッ化物浴による電解ではICP発光文光法によりTa、WおよびMoなどの主な不純物成分の化学分析を行った。塩化物浴電解においてはTa、WおよびMoなどの不純物成分がそれらの種類によって除去の程度が異なった。これらは各塩化物の標準生成自由エネルギー変化から計算される理論分解電圧が異なるとともに、これらの不純物成分の溶融塩中における構成イオン種が異なり、これらイオン種の析出電位が塩化物溶融塩中においてそれぞれ異なるからであると推測された。フッ化物浴電解においてはTa,WおよびMoなどの不純物成分がいずれも除去可能であった。その原因はこれらの不純物成分の溶融塩中における構成イオン種の析出電位がNbのイオン種よりいずれも卑であることに起因していると推測された。 また、フッ化物浴電解後の精製Nbを電子ビーム溶解法により処理した結果、Nbより蒸気圧の高いFe,Niなどの金属不純物および水素、窒素、酸素などの非金属成分が除去され、純度99.999%の高純度Nbを創製することができた。
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