研究課題/領域番号 |
07555540
|
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
須佐 匡裕 東京工業大学, 工学部, 助教授 (90187691)
|
研究分担者 |
南口 誠 東京工業大学, 工学部, 助手 (90272666)
福山 博之 東京工業大学, 工学部, 助教授 (40252259)
丸山 俊夫 東京工業大学, 工学部, 教授 (20114895)
|
キーワード | 近赤外分光放射率 / 液体金属 / 貴金属 / 銅 / 銀 / 金 / 放射機構 / モデル |
研究概要 |
従来報告されている融点における金属の分光放射率値の多くは、可視波長域において測定された値である。ところが、材料製造プロセス設計及び制御のためには、近赤外波長域における分光放射率の値がプロセス・モデリングの入力データとして重要となる。しかしながら、それに関するデータの蓄積は十分とは言い難い。そこで本年度は、可視分光放射率測定用に一昨年度に製作した装置を赤外域にも適用できるように改造し、近赤外域(1000〜2500nm)において、銅、銀及び金の液体・固体状態の分光放射率をそれぞれの金属の融点で測定した。 分光器の検出器としてはPbS光伝導素子を用いた。貴金属から放射される微弱な赤外放射光の強度は、チョッパーを用いて信号電圧をロック・イン増幅することによって測定した。測定に用いた全ての金属について、その分光放射率は、液体、固体状態ともに負の波長依存性を示した。また、液体の分光放射率のほうが固体より大きい値を示した。一例として、銅の場合、波長1000nmにおいては固体で0.046,液体で0.076の値が、波長2500nmにおいては固体で0.032、液体で0.054の値が得られた。昨年度測定した銅の可視分光放射率においては、直接バンド間遷移に起因する構造がスペクトルに見られたが、今回測定した近赤外分光放射率にはそのような構造が見られなかった。このことより、近赤外域においては、バンド内遷移が熱放射の支配的な機構となっていると結論した。一方、液体状態における貴金属の分光放射率は、従来単純なドル-デ理論によって説明できるとされてきたが、今回測定された分光放射率を単純なドル-テ理論で定量的に説明することは不可能であった。これを定量的に説明するために、電子-フォノン、電子-電子及び電子-表面の相互作用とバンド間遷移の間接的な効果を考慮した「ほぽ自由な電子モデル」を提案した。
|