研究概要 |
本研究では,活性炭電気二重層キャパシタの,重車両エネルギ回生デバイスとしての展開を目指し,電極活性炭の細孔特性や表面特性を制御したサンプルを用いて静的蓄電能力および速度論的特性に関し実験的及び理論的検討を行い,以下のような研究成果を得た. 1.静的蓄電能力:種々の市販品をベースに,マッフル炉を用いて賦活及び表面改質を行い特性の異なる活性炭を調整した.これらのサンプルを用いたキャパシタの静的な容量を,昨年度種々の改良を加えた測定系において実測した.窒素吸着に基づくキャラクタリゼーションから得た細孔径,表面積等を指標に総括すれば,電極活性炭の単純な比表面積の増加は静的蓄電量に対して顕著な効果は与えなかった.一方,表面酸素完納基量は容量を有意に増加させ得ることがわかった. 2.速度過程解析:数種の活性炭電極及び数種の電解質溶液の組み合わせで過渡応答実験を行った.多孔質電極内のイオン種の泳動の速さを表現する「有効伝導度」を取り入れたモデルにより実測挙動を解析し,パラメータフィッティングによりこれを得た.その結果,t-plot法で得られる細孔径で約0.7nmを境に,有効伝導度が大幅に異なることが明らかとなった.これは移動イオン種の水和直径が0.7nm程度であることと照らし,荷電種の移動が水和水を伴った状態で生じていること,およびその移動過程に細孔の立体障害が多大に寄与していることを示唆するものである. 3.総合的視点:急速充放電を目指すならば,容量と速度の中位である細孔径0.8〜0.9nm程度で,酸素官能基を付与した電極を用いるべきである.これ以上の高賦活化が初期電流挙動の向上に与える効果は小さく,またこれより低い賦活度では容量は同程度有するもののイオン移動抵抗が急激に増加するからである.ただし,表面酸素官能基を付与した電極の耐久性については未知の部分が多く,今後の検討が望まれよう.
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