研究概要 |
ペクチンオリゴ糖連続生産のための回転環状反応クロマト装置の開発には、クロマト装置の分離特性に関する研究と共に、使用する固定化酵素の反応速度論に関する研究が必要となる。本研究では、糖の酵素加水分解プロセスの速度論の解明ならびに連続加水分解プロセスの構築を目的として、基質に逐次加水分解が起こる最も小さな糖である重合度6のオリゴ糖(イソマルトヘキサオース)を、酵素にこの基質を加水分解するエンドデキストラナーゼを取り上げ、まず回分反応器を用いて均相酵素加水分解実験を行った。そして、基質のα-1,6グリコシド結合の切断に関する酵素の選択性の概念を新たに導入した速度論モデルを構築し、種々の条件下での実験結果とのフィッティングによりモデル定数を推算した。これより、エンドデキストラナーゼは基質分子のより内側に存在するグリコシド結合に配位しやすいという可能性が示唆された。次に、この酵素を多孔性メタクリル酸共重合体ビーズであるAffi-Prep10(バイオラット社製)に固定化することにより固定化酵素加水分解実験を行うと共に、担体内の物質移動抵抗を考慮した速度論モデルを構築した。そして、種々の条件下での実験結果とのフィッティングにより担体内の有効拡散係数などのモデル定数を推算した。得られた有効拡散係数の推算値は水溶液中での文献値よりも数オーダー小さなものであった。さらに、この固定化酵素を充填したカラム型リアクターを設計・製作して連続加水分解実験を行うと共に、本連続反応プロセスに関する数学モデルを構築した。そして、前述した回分固定化系でのフィッティングにより推算したモデル定数を用いて本数学モデルによるシミュレーションを行ったところ、種々の条件下での連続加水分解実験結果と良好に一致した。
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