本年度の研究においては、生産プロセスとしての光学分割法開発のための基礎的研究を主として行い、次の成果を上げている。 1.D-L-SCMC系においては、回分操作法にてD体過剰、L体過剰時の晶析現象について研究している。特にラセミ過飽和溶液中にL体種晶を添加した場合のL体の成長速度が、L体がD体より多い場合と少ない場合とで異なることを見出し、生産量との観点で、溶液中のL体濃度の減少速度と操作条件との関係を得た。またD・L体溶液中のL体種晶表面上にD体の核発生が起こることにより成長したL体結晶の純度が低下し、これが光学分割を妨げることも見出した。光学分割プロセスでは、D体核の発生の起こらない範囲でL体種晶上にL体のみを成長させ、その結果を分離して生産することが必要である。その観点で、L体種晶上でのD体核発生までの待ち時間の実測と、それに対する操作条件の影響を明らかにする実験を行い、工業的に操作可能と考えられる比較的に操作過飽和度の低い範囲における待ち時間に対する操作過飽和度と懸濁結晶密度の関係を明らかにした。これらの相関式より光学分割プロセス設計法について検討した。本プロセスの工業化を考えた場合、蒸発式による操作法が有効で、そのための装置の試作・試験運転も行い、次年度におけるプロセスの確認の準備も行っている。 2.D・Lマンデル酸の光学分割としては高圧付与による圧力晶析法と冷却晶析法とがあり、高圧下を含めた相平衡関係を求めた。それよりL体の晶析する範囲は高圧付与により変化し、常圧下における蒸発法との組み合わせによる新しい分割法について検討している。また冷却法による晶析法に対しても晶析速度を測定し、それらを総括した光学分割法の提出を検討している。
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