本研究では、DL-マンデル酸系及びDL-SCMC(S-Carboxymethyl-DL-Cysteine)系をモデル系として、優先晶析法によるD体及びL体の選択的分割プロセス開発のための基礎研究とプロセスの提案を行った。マンデル酸系においては、L体組成が(L+D)に対し30〜70%の範囲の分割に関しては圧力晶析法と蒸発法との組み合わせプロセスを検討し、またL体組成が30%以下の範囲に関しては、その303Kにおける溶解度曲線を測定し、それらの組み合わせによる効果的分割法を提案した。 一方、DL-SCMC系からのL体の分割については等電点近傍に着目して、D体の核発生のない範囲におけるL体種晶の成長条件を検討し、操作過飽和度0.1〜0.25[g/100ml]の5wt%及び10wt%NaCl添加DL-SCMC溶液内でのL体単一結晶上の成長速度を実測した。その結果、成長速度は共存するD体量の影響を受けるという結果が得られ、D体濃度S_Dの結晶成長速度に対する影響として、ΔC_L/S_D=αなる成長阻害因子を考えた。これより、ΔC_L・αを結晶成長速度に寄与する過飽和度ΔC_rとして、結晶成長速度dL_a/dθとΔC_rの相関を得た。一方、晶析操作時の溶液濃度変化は、ラセミ過飽和溶液にL体種晶を添加すると、L体の成長に従って初めL体濃度のみが減少するが、ある時間経過すると、D体の濃度も低下した。これは、L体種晶表面上にD体の結晶核が発生し、それが成長するためであることを確認した。そこで、L体種晶表面上へのD体の核化現象について研究を行い、二次元核化の待ち時間が過飽和度、結晶懸濁密度の影響を受けることを明らかにして、L体のみが安定に成長する操作条件を見出した。また、蒸発晶析法の実験も行い、冷却法で得られたデータとの比較検討も行った。これらより蒸発操作を加味した晶析法による光学分割プロセスを提出した。
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