同位体トレーサーを用いたプローブ反応法は、実際の反応状況下における活性点構造を解明するための有力な手段である。その分析手段としてマイクロ波分光法が最も有効であるが、分析感度や測定可能な分子種に限界があった。本研究では、このような短所を改善するため、まずフーリエ変換マイクロ波分光器の試作を第一の目標とし、その性能・定量性を確認するため従来のシュタルク型分光器で方法論の確立しているプロペンやブテン分子を用いた場合の結果と比較検討することを本年度の目標とした。研究実施計画に従い、シンセサイズド・スィーパ-、マイクロ波アンプ、ディジタイザー、パルスタイミニグコントローラー、パルスドライバーなどを購入し、既存の導波管型分光器と組み合わせてフーリエ型に改造し調整と性能の検討を行った。その結果、感度は従来の分光器に比べ1桁向上するものの、所期の目標であった2〜3桁の向上のためにはマイクロ波の出力が不足であることが明らかとなった。これを改善するためには、ミラーを用いた共振型の分光器にするのが最適であるとの結論に達し、現在ミラー及び真空容器の設計・製作に着手している。 一方、上記の検討を行うかたわら、従来型の分光器を主に用い、担持酸化物触媒の構造敏感性について研究を進めた。高表面積のアルミナ担体の表面にV、Mo、W、Re、Hfの酸化物モノレイヤーを調製し、プロペン分子の酸化反応やメタセシス反応の中間体をプローブ反応法を用いて解明した。その結果、アルミナ担持V_2O_5上でのプロペンの酸化反応では、σ-アリルないしはπ-アリル中間体が酸化反応の関与している可能性が示唆された。また、アルミナ担持のWO_3やRe_2O_7上でのメタセシス反応では、n-プロペニル中間体を経てメタセシスに活性なカルベン錯体の形成が示唆された。
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