研究概要 |
本研究では、同位体トレーサー法による反応状況下における触媒活性点構造の解明のため、フーリエ変換マイクロ波分光法の試作を行った。初年度は既存の導波管型分光器のフーリエ型への改造を試みたが、所期の感度向上が達成されなかったため次年度ではファブリーペロ-型の共振器(ミラー)を採用し、超高真空容器を設計・製作し分光器を組み上げ調整を行った。最終年度である本年度は、この分光器を用いての新しい同位体プローブ分子の開発を行った。現在、CH_3,CH_3CHO,CH_3NH_2,CH_3CN分子のD化物の合成とその回転スペクトルの同定、定量化を行いつつある。メタノールやアセトアルデヒドに関してはCOの水素化の重要な生成物でありその生成機構に関してはまだ検討の余地がある。又、これらの化合物を選択性よく合成するための触媒活性点構造の解明は触媒設計の立場からも不可欠である。 一方、上記の検討を行う傍ら、従来型の分光器を主に用い担持金属、金属酸化物、金属炭化物、金属窒化物上で、C_3H_6-C_3D_6、C_3H_6-D_2反応を行いその交換過程で生成するペロペン-d_1置換体をマイクロ波分光器で分析することにより反応機構や反応中間体の違いを検討した。その結果、プロペン分子間の水素交換反応は金属上では、気相に水素分子が存在するときは会合型、存在しないときは解離型で進行するのに対し、酸化物や炭化物では気相水素分子の有無に関わらず会合型と解離型の反応が独立に共存できることが明らかとなった。ところが、金属窒化物上では、事情が著しく異なり会合型と解離型は同時に存在できるが、気相水素は解離型の速度をも促進するという反応形式のあることが結論された。これは金属窒化物上ではプロペンの吸着状態が2種類存在することを示唆しており今後の検討が期待される。
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