研究概要 |
本研究では鉄と周期律表で同族にあるルテニウムの触媒作用に着目し、高価なルテニウムを効果的に用いるための新しい試みを行った。ルテニウムがきわめて高活性なことを利用し、触媒を鉄触媒のように使い捨てにせず繰り返し利用できる形態にして用いようとした。ルテニウムを不活性な金属シリコン基盤上に薄膜化して析出させた。これを触媒として石炭液化反応を試みた、現在のところ、触媒の調製法を種々検討している段階であり、やや触媒の表面積が小さすぎるために,触媒活性が低かった。また,液化をバッチ反応で行っているため、触媒と石炭スラリーとの接触が十分でないために,満足する成果を得るだけの成果を得ていないが、平成八年度に成功に導く基礎的な実験を終了した。一方、基礎的なルテニウム触媒の特性を検討を行い、石炭液化反応中の触媒は石炭のモデル化合物を用いた反応で示されるような、単純なものでなく、極性のより高い物質と触媒の相互作用が優先的に起こり、石炭分解ラジカルへの気相水素の移行、芳香環の水素化さらに水素化分解などが炭種や溶媒などにより複雑に影響することを明らかにした。 石炭液化反応の進行と生成物の化学構造について検討を進め、石炭液化油は芳香族に富む比較的分子量の小さいものと脂肪族に富む比較的分子量の高い成分から構成されていることを見いだし、ルテニウム触媒は芳香環の水素化を促進し、良質の低分子量の液化油の生成にきわめて有効なことを明らかにした。
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