本研究では、まず、現有の分光器に付設できるイメージインテンシファイア-増感マルチチャンネルフォトダイオードアレー検出器を作製・導入することにより、現有する電解ストップトフロー電気化学発光装置を用いて、発光スペクトルの測定を可能にした。また、カラム電解法により電解した溶液を混合したその場で発光が検出できる電解発光セルを作製したのち、ジフェニルアントラセンの発光系で感度や集光効率に関する基礎検討を行なって、高感度検出が可能なセル及び測定系を構築した。 次に、アセトニトリル中でのジフェニルアントラセンカチオンラジカルとピレンアニオンラジカルとの間の電子移動反応による発光系を対象として、異種分子間での電子移動による発光過程を観測した。この際、発光スペクトルの測定によって、発光源はジフェニルアントラセンの一重項状態であることを明らかにした。本法では、通常の電気化学法では検出できなかった一重項状態を対象として電子移動過程の解明が可能であることがわかった。フェニル基をハロゲンに置換した誘導体のカチオンラジカルについても検討した結果、発光スペクトルが置換基によってかなり変化する結果が得られた。これらの詳細については現在検討中であるが、ラジカルの安定性や置換基の種類によって生成する励起状態が変化していることが考えられる。
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