高感度フロー電解発光測定法の開発による溶液内電子移動過程の解析

1996 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 07555567
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 小山 宗孝 京都大学, 工学研究科, 助手 (90221861)
• 研究分担者: 長村 俊彦 (株)ユニソク, 研究所長(研究職)
• キーワード: 電気化学発光 / イオンラジカル / 電解ストップトフロー法 / カラム電極 / パルス電解 / 発光検出

研究概要

昨年度に導入できた高感度イメージインテンシファイア-増感マルチチャンネルフォトダイオードアレー検出器を用いて電気化学発光スペクトルの詳細な測定を行うことにより、本年度は非水溶媒中での電子移動及びエネルギー移動過程に関して多くの知見を得ることができた。特に、従来の電気化学発光検出法では解析が不可能であったギブスエネルギー差の大きいイオンラジカル間で発光系に関する解析を可能にして、研究を飛躍的に進展させることができた。
その成果を、チアントレンカチオンラジカルとピレンアニオンラジカルの反応系で示す。この反応系では、単一の励起種からの発光に帰属できない複雑な発光スペクトルが観測される。この発光過程は、エネルギー的にはピレンの1重項及び3重項、さらにはチアントレンの1重項に帰因する発光の混合によるものだと考えられる。本研究で開発した電解ストップフロー電気化学発光測定装置においては、基質濃度及び電解量を制御して溶液混合を行うことにより、これらの基となる電子移動及びエネルギー移動過程を明確にすることができた。具体的には、ピレン中性分子の共存下ではピレンの3重項をからの発光が顕著になり、チアントレン中性分子の共存下では、チアントレンの1重項からの発光が顕著になる結果が得られた。この測定結果は、溶液内電子移動過程の解明に有効であるばかりでなく、電気化学発光反応においても条件制御により異なった波長の光を得ることができる可能性を示している。これらは、電気化学反応で生成した化学エネルギーを特定の光エネルギーに変換するというエネルギー変換の立場からも興味深い。
以上の成果は、学会誌に投稿中であり、現在さらに検討を進めている。

研究成果

• [文献書誌] M.Oyama: "Solvent effect on the ion pair formation between 2,3,5,6-tetrachlero-1,4-beuzo quinone anion radical and Mg^<2+> measured using a pulse olectrolysis stopped from method." J.Electroanal.Chem. 401. 243-246 (1996)
• [文献書誌] M.Oyama: "Thin Layer Electrochemical Resonence Raman Measurement for Complex Electrode Reactions." J.Chem.Soc.Chem.Comm.1035-1036 (1996)
• [文献書誌] 小山宗孝: "ラマン分光法による炭素電極表面の解析" 化学と工業. 49. 801- (1996)
• [文献書誌] M.Yamanuki: "Resonance Raman measurement for anthracene derivative cation and anior radicals using a colamn-electrolytic continuous-flow method." Vibrational Spectroscopy. 13. 205-211 (1997)
• [文献書誌] M.Oyama: "Detailed Analysis of Reaction Kinetics and Mechanismus of Electrogenerated Tetramethoxy Thianthrene Cation Radical and Dication" J.Electroanal.Chem.(印刷中).
• [文献書誌] T.Nagaoka: "Soluble Polyaniline as an Intelligent Exchanger for Inorganic and Organic Anions." Anal.Chem.(印刷中).