ニュートラルキャリヤ型イオンセンサーの感応膜材料としてシリコーンゴムは、可塑剤不要や生体適合性など様々な利点を有しながらも、実用化に至っていない。本研究では、ニュートラルキャリヤ型シリコーンゴム感応膜の高性能化を検討し、各種イオンセンサーへの応用、さらに、臨床分析での実用化を目指した。すなわち、ナトリウムイオノフォアを用いるシリコーンゴム膜型ナトリウムイオンセンサー(電解効果トランジスター、イオン電極)について検討した。 1)究極のニュートラルキャリヤ型イオン感応膜である、ニュートラルキャリヤ化学結合型シリコーンゴム膜を作製し、イオンセンサー応答を調べた。すなわち、架橋ポリジメチルシロキサン(シリコーンゴム)合成過程でアルコキシシリル基を有するイオノフォアを共存させせ、イオノフォアを化学結合によりシリコーンゴム膜に固定化した。イオノフォアとしては、16-クラウン-5誘導体ならびにカリクス[4]アレン誘導体を用いた。その結果、イオノフォアが化学結合により固定化されているにも関わらず、優れた電極性能を示した。すなわち、応答感度、イオン選択性および応答速度において、従来のイオノフォア分散型のシリコーンゴム感応膜に匹敵する性能を得た。また、人血清中のナトリウムイオン定量を行い、その高い実用性を確かめた。 2)ゾル-ゲルガラスを感応膜材料とするニュートラルキャリヤ型イオンセンサーの検討も行った。ニュートラルキャリヤをゾル-ゲルガラス化学結合して得られるイオン感応膜のイオン感応性電界効果トランジスターへの応用に関して、予備実験を行った結果、本系についても良好なセンサー特性が得られた。
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