ニュートラルキャリヤ型イオンセンサーの感応膜材料としてシリコーンゴムやゾル-ゲルガラスは、可塑剤不要性や生体適合性など様々な利点を有しながらも、実用化に至っていない。本研究では、ニュートラルキャリヤ型シリコーンゴム(およびゾル-ゲルガラス)感応膜の高性能化を検討し、各種イオンセンサーへの応用、さらに、臨床分析での実用化を目指した。 1)平成8年度の研究において、ニュートラルキャリヤをシリコーンゴムに化学結合することにより、膜インピーダンスの上昇やイオンセンサー応答速度の低下をもたらしたが、本年度は、ニュートラルキャリヤの化学結合による移動度の低下を軽減するために、ニュートラルキャリヤのシロキサンオリゴマーへの化学結合を行い、シリコーンゴム感応膜への分散を検討した。その結果、このカリクス[4]アレンオリゴマーを含むシリコーンゴム型ナトリウムイオン選択性電極は、広いナトリウムイオン活量範囲においてネルンスト応答を示した。また、応答速度においても、従来の化学結合型イオン選択性電極よりも優れた結果が得られ、血清中のナトリウムイオン定量に有望であることが判明した。 2)さらに、シリコーンゴム型イオン感応膜から一歩進んで、ニュートラルキャリヤを含むゾル-ゲルガラス型イオン感応膜のイオンセンサー(ISFET)への応用の可能性も検討した。テトラエトキシシランとジエトキシジメチルシランを出発原料とするゾル-ゲルガラス感応膜に、バリノマイシンやビス(クラウンエーテル)などのニュートラルキャリヤを包埋して得られる感応膜では、従来の可塑化ポリ塩化ビニル感応膜と比べて全く遜色のないセンサー性能が得られ、加えて、優れた生体適合性が認められた。また、アルコキシシリル基を持つイオノフォアのゾル-ゲルガラス感応膜についても、良好な結果が得られた。
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