研究概要 |
共役π電子系をもつ配位子により架橋されたロジウム等の遷移金属の複核錯体において、複数の配位子上の共役π電子系が金属原子d軌道を介して相互作用した新しい電子系の形成が見出された。このような錯体の結晶中では多次元相互作用系が構築され、磁性・電導・光応答等の面で新しい機能の発現が期待される。そこで分子内π-d相互作用と分子間π-π相互作用の大きなクラスター錯体イオンラジカルを検索し、それらの幾何構造ならびに電子構造と物性評価を進め、以下のような結果を得た。 (1)種々の軸配位子をもつRh(II)の複核錯体カチオンラジカルの電子状態を密度汎関数法により計算し,不対電子軌道の対称性ならびにその配位子上への非局在化が配位子に依存して大きく変わることを明らかにした.すなわち,軸配位子がホスフィンの場合は不対電子は金属原子間σ軌道を占め軸配位子上に60%非局在化し、架橋配位子がアミデ-トの場合は不対電子は金属原子間δ^*軌道を占め架橋配位子上に40%非局在化し,それ以外の錯体の不対電子は金属原子間π^*軌道を占めて金属原子上に局在していることを明らかにした.(2)ヒドロキシキノリン類を架橋配位子とするRh(II)の複核錯体およびそれらのカチオンラジカル塩を新たに合成単離し,その結晶構造を明らかにした.架橋配位子を大きな芳香族にしたことにより,中性状態においてもまたカチオンラジカル状態においても結晶内において隣接分子間のπ-π相互作用の大きくなる傾向が明らかになった.(3)4つの塩化物イオンにより架橋された新しいタイプのRh(II)の四核錯体を合成し,その構造を明らかにし,また容易に一電子酸化されてカチオンラジカルを与えることを明らかにした.
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