フォトクロミック化合物を用いた光メモリ

1995 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 07555584
• 研究種目: 試験研究(B)
• 研究機関: 九州大学
• 研究代表者: 入江 正浩 九州大学, 機能物質科学研究所, 教授 (30001986)
• 研究分担者: 久米 実 三洋電機(株)ニューマテリアル研究所, 主任研究員 ; 辻岡 強 三洋電機(株)ニューマテリアル研究所, 研究員 ; 内田 欣吾 九州大学, 機能物質科学研究所, 助手 (70213436)
• キーワード: フォトクロミズム / 光メモリ / 近視野顕微鏡 / ジアリールエテン

研究概要

熱安定性、繰り返し耐久性に優れたフォトクロミック反応性を示すジアリールエテンを光メモリ媒体へ応用することをめざし、非破壊読みだしの方法の探索、微細光源による超高密度光記録の可能性を検討した。フォトクロミック分子は光反応しきい値を持たないため、記録を多数回読み出すと記録が消滅する欠点を有している。この欠点を克服する目的で、超低パワー再生光による多数回読みだしの可能性を、理論的、実験的に検討した。20nwの超低パワー光により読み出すと、100万回の読みだしも可能であることが実証された。この方法は、破壊読みだしの欠点を克服する現実的な解決方法である。
光記録の面記録密度は、書き込みスポット径に依存する。現状では780nmのレーザーを用いていることから、スポット径を0.8μm以下にすることは干渉効果のため不可能とされてきた。しかし、微細開口からのエバネッセント光を用いればその制限は解かれる。フォトクロミックジアリールエテンを記録媒体として、この微小光源による微小スポット書き込みを試みた。ポリスチレン薄膜にジベンゾチエニルペルフルオロシクロペンテンを分散させ、紫外光により全面着色させた後、微小開口部からの529nm光によりブリーチさせスポットを形成させた。この場合は、しかし、コントラスト良く測定するには膜厚を2μm以下にすることができず、スポット径は1μm程度であった。1μm以下の薄膜でもコントラスト良く記録/読み出しを可能にするには、バルク薄膜でフォトクロミク反応するジアリールエテンの合成が必須である。現在、分子設計・合成をすすめている。

研究成果

• [文献書誌] T.Tsujino,M.Kume,M.Irie: "Superlow-Power Readout Characteristics of Photochromic Memory" Jpn.J.Appl.Phys.34. 9439-6443 (1995)
• [文献書誌] M.Irie,K.Sakemura,M.Okinaka,K.Uchida: "Photochromic Dithienylethenes with Electron Donating Substituents" J.Org.Chem.60. 8305-8309 (1995)
• [文献書誌] K.Uchida,M.Irie: "A Photochromic Dithienylethene That Turns Yellow By UV irradiation" Chem.Lett.11. 969-970 (1995)
• [文献書誌] M.Irie,K.Uchida,T.Eriguchi,H.Tsuzuki: "Photochromism of Single Crytalline Diarylethenes" Chem.Lett.10. 889-900 (1995)
• [文献書誌] K.Uchida,M.Irie: "Photochromism of DInaphthylethene Derivatives,Stability of the Closed-Ring Forms" Reserach on Chem.Intermediates. 21. 861-876 (1995)
• [文献書誌] M.Uchida,M.Irie: "Structural Properties Required for Two-photon Photochromism of Pyran Derivatives" Chem.Lett.4. 323-324 (1995)
• [文献書誌] 入江正浩: "有機フォトニクス" アグネ承風社, 520 (1995)