研究概要 |
硬化後に、分子内に水酸基を持たないエポキシ樹脂は吸湿性が低いとともに誘電率が低く、高性能の電気電子材料として大いに期待される。そこで種々の新規硬化剤を用いてエポキシ樹脂の硬化を行ない、それらの硬化樹脂によるエポキシ樹脂の硬化反応性、硬化樹脂の力学的性質、誘電的性質、吸水性などについて検討を行なった。 三官能性の活性エステルとして1,3,5-トリヒドロキシベンゼンの脂肪酸および安息香酸のエステルを硬化剤に用いてエポキシ樹脂の硬化を行うと、活性エステルのカルボン酸残基のかさ高とともにその反応性が低下した。また、ガルボン酸残基のアルキル鎖が長くなるとともに硬化樹脂のガラス転移温度(Tg)は低下するが、カルボン酸が枝分かれするか安息香酸エステルになると分子内部回転に対する障壁のためTgは高くなる。 活性エステルをエポキシン樹脂の硬化剤に用いると、得られた硬化樹脂は硬化後に水酸基が残らないので耐水性、電気特性は向上するが、Tgは従来の硬化剤による硬化物に比べて低下した。そこで内部エステル結合を有する種々の新規の多官能性活性エステルを合成し、内部エステル基のエポキシ基への挿入反応を用いてエポキシ基の硬化を行った。耐水性、電気特性の向上とともに、得られた硬化樹脂のTgはいちじるしく高くなり、最高で142℃に達した。 また、フェノールノボラックおよびクレゾールノボラックにトリメチルシリルエーテル基を導入し、硬化剤として用いてエポキシ樹脂の硬化を行うと、Tgは110℃程度であったが、吸水性が従来の硬化剤による硬化物に比べて1/10に低下した。
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