研究課題
試験研究(B)
これまでの研究から、ジメチルアニリンはフラーレン(C_<60>)と電荷移動(CT)錯体を形成し、可視・紫外吸収スペクトルにおいて電荷移動吸収帯に基づく新しい吸収の発現が確認されている。しかし、その錯体の安定度定数は非常に低く、大量のジメチルアニリンの添加が必要であるという問題を抱えていた。そこで、我々はカリックスアレーンのパラ位側にジメチルアニリン類似の構造を有する化合物(1)を合成した。この化合物は、C_<60>と相互作用があることが知られているカリツクスアレーンを基本骨格とし、しかも六つのジメチルアニリン部位を有するのが特徴である。トルエン溶媒中で、C_<60>に1を添加していくと、可視・紫外吸収スペクトルにおいて500〜650nmあたりの吸収の増加が確認された。1が500〜650nmあたりに吸収を持たないため、この結果は、1がC_<60>とCT錯体を形成することを示すものである。このときの会合定数は、7.9dm^3mol^<-1>であった。この値は、参照化合物である単量体のジメチルアニリン誘導体を用いたときの会合定数(0.2dm^3mol^<-1>)より大きく、カリックスアレーンの環構造による会合定数の増加を示すものである。つまり、環状化合物である1は、その空孔内にC_<60>を取り込んだ形で包接していることが示唆された。これに対し、他のフラーレン(例えばC_<70>)は、1との錯体形成によるCT吸収帯がほとんど観測されなかった。これらの結果から、1はC_<60>を選択的に取り込むことが明らかとなった。
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