1)ポロピロールは安定で耐熱性にも優れた導電性高分子である。我々は、すでに、分子状酸素を酸化剤とし、塩化銅(I)-塩化アルミニウムの錯体を触媒として、ピロールからポリピロールを触媒化学的に合成する手法を開発しているが、この触媒は水と反応するため、酸素が還元されて副生する水が触媒と反応し、触媒活性が低下するという欠点がある。そこで、塩化アルミニウムを含まない触媒系の開発に取り組み、種々の金属塩について検討した結果、塩化鉄(III)などの鉄(III)塩が有効であることを見出した。 2)ピロールを原料にして、酸素を酸化剤とし、塩化鉄(III)を触媒として、ポリピロールを合成するとき、用いる溶媒は反応収率およびポリピロールの電導度に大きな影響を及ぼした。溶媒としては炭酸プロピレンが最も好ましく、炭酸プロピレンを溶媒として40℃で36時間反応させると触媒当たり1024%のTONでポリピロールが得られた。このとき、電導度も3.3×10^<-2>Scm^<-1>と最も高かった。 3)さらに合成ポリピロールの電導度を上げるためには、ドーパントとなるアニオンの共存下で触媒的酸化重合反応を進めると良いことが明らかになった。例えば過塩素酸テトラブチルアンモニウムの共存下でピロールの5分の1の塩化鉄(III)を用い、炭酸プロピレン中40℃で4時間反応すると、収率は十数%と低いが、電導度は1.8Scm^<-1>という十分に高い電導度を持つポリピロールを得ることができた。
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