研究概要 |
本研究では、生分解性ポリマーとして注目されている一成分系・二成分系脂肪族ポリエステルの構造-物性相関を明らかにすると共に、構造規制と実用化を企図した新しい化学合成法の開拓を検討したものである。以下に検討項目とその成果を示す。 (1) L-乳酸を減圧下に直接加熱脱水縮合することにより、分子量2000〜5000オリゴマーを生成させ、続いてこのオリゴマーにシリカ-アルミナ触媒(Al_2O_3含量5-30wt%)を添加して2-5mmHgで加熱を続けるとことにより、1000,000を超える分子量を有するポリ-L-乳酸(PLLA)が得られることを見出した。(2) L-乳酸メチルを用いて、直接縮合によりPLLAを合成する試みを行ない、特殊なスズ系触媒の採用により平均重量分子量10,000-30,000のPLLAが得られることを確認した。従来、この種の重縮合は進行しないとされてきたものであるが、特殊な触媒の採用により初めて可能となったものである。従って、このプロセスの採用によりポリ-L-乳酸の工業生産に新しい道が拓かれる。(3) 5員環ラクトンであるγ-バレロラクトンは単独重合性を示さないが、β-ブチロラクトンとの共重合により重合することが初めて明らかとなった。γ-ブチロラクトンとβ-ブチロラクトンの共重合も同様に進行し、微生物産生ポリエステルと同じような構造を有することが確認された。(4) PLLAとポリエーテル(Puluronic^<TM>)のブロック共重合体の合成ならびにその繊維化を検討し、生分解性を示す繊維素材の開発に成功した。さらにその表面物性についても検討を加えた。(5) L-ラクチドの重合をPLLAの融点以下で行うことにより、固相系で後重合を行うことができること、また、PLLAの結晶化を伴う後重合により生成ポリマー中の残存モノマーを大きく低減できることを見いだした。(6)二成分系脂肪族ポリエステルであるポリ(ブチレンサクシネート)(PBS)の繊維化を検討し、その酵素分解性を評価した。生分解性ポリエステルの化学合成は発酵合成に代わるプロセスとして重要であり、その応用は、工業分野(分解性プラスチック)だけでなく医用分野(生体内吸収性材料)にもわたるため、本研究の成果は学会だけでなく産業界からも注目を集めている。
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