研究概要 |
微生物由来のポリ(3-ヒドロキシ酪酸)は生分解性,生体適合性などを持つ熱可塑性ポリエステルであるが,高結晶性で堅くて脆いために実用化されるまでには至っていない。本研究では,微生物由来のポリエステルを主成分とし,水素結合のような分子間相互作用によりこの主成分と相互作用可能な副成分高分子材料を組み合わせることにより,力学的強度,成型性などの性質の優れた,実用性の高い生分解性高分子複合材料を開発することを目的として,研究を行った。 本年度はまず副成分高分子材料として立体規則性の異なる,すなわちアイソタクチック,シンジオタクチックおよびアタクチック-ポリ(ビニルアルコール)(PVA)とポリ(3-ヒドロキシ酪酸)からなる高分子複合材料を調製し,各成分高分子の混合状態,熱的性質,結晶性などを,主に固体高分解能^<13>CNMR,示差走査熱量計,および本科学研究費補助金にて購入したフーリエ変換赤外分光器を使用して評価した。ここで,PVAは生分解性が確認されている唯一のビニル型高分子材料である。研究の結果,PVAとブレンドすることによりポリ(3-ヒドロキシ酪酸)の結晶化が抑制され,特にPVA組成の高いブレンド系では両高分子成分は非晶相で相溶状態にあること,相溶化の程度は,シンジオタクチックPVAの場合が一番高くなることなどを見出だした。 さらに,微生物由来の複数のポリエステルを組み合わせから成る複合材料の開発を目的として,微生物由来の代表的な共重合ポリエステルである3-ヒドロキシ酪酸/3-ヒドロキシ吉草酸共重合体の微細構造を解析した。その結果,この共重合体は単量体組成が異なる複数の共重合体のブレンドとなっており,成分共重合体の連鎖構造と混合組成に依存して物性と形態が大幅に変化することを認めた。
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