研究概要 |
高分子結晶の構造をX線回折データを基に精度高く解析し,定量的な物性の議論に耐え得るデータを得ることは今なお極めて困難である.しかし,ここで高分子の希薄溶液から成長してくる,いわゆる高分子単結晶に着目する必要がある.この単結晶は,せいぜいサブミクロンサイズしかなく,とり扱いは極めて困難であるが,その電子線回折像はバルク試料について撮影されたX線回折像の数倍から数十倍もの数の,かつ極めてシャープな反射を与える.この反射の位置および強度を,もしも十分な精度でもって定量評価することが出来るならば,極めて精度の高い構造が得られるはずであるが,現時点では必ずしも十分に定量的な構造解析にまで及んではいない.我々が目的とするのは,そのシステムを新たに開発することである.今年度は電子顕微鏡システムを導入し、そのシステムの、高分子単結晶に対する基本的性能を確かめることを焦点に研究を行った。低分子および高分子単結晶を用いて2次元電子線回折像を測定し、本システムが十分に高分子単結晶の電子線回折データを基にした構造解析に利用できることを確認した。
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