研究概要 |
地下空間は,その潜在的特性である恒温性,放射線遮断性,耐振動性などの特徴を有するが,地上空間に比較し地上との換気経路が限定される閉鎖性が欠点として挙げられる。したがって,労働環境災害や火災などの事故対策の十分な検討を総合的に実施する必要があるが,現実には空間条件によって十分なセンサーの設置が不可能である場合が多く,新たな手法の開発が必要である。本研究では,トレーサガスを利用した総合的換気測定技術の開発を試験的に実施することを目的とする。本年度は,現場適用性に関する試験および実計測を実施し,以下の成果が得られた。 1)主要設備であるトレーサガス測定システムの導入とシステム化を計り,測定感度・精度の検証を実験室的に実施し,実際の地下空間への現場適応性を確認した。 2)縮小モデルを使用した多様な形状を有する地下直方体空間の換気特性をモデル実験によって測定し,大まかな換気特性の測定を行い,フィールド現場試験の実施に関連した参考データを取得した。 3)総合換気測定の現場適用を計る実際の地下空間として,立地および稼行条件などを考慮した結果,秋田県鹿角郡比内町で現在稼行している地下採石場を選定した。その予備的な基礎調査から,比較的大規模な地下空間であるため,通常の速度計による通気計測が困難で,粉じんの効果的排出方法を模索していることがわかった。本試験研究の第1段階として,トレーサガス測定システムの中でも定常トレーサガス流出による地下空間各所の濃度計測による換気特性の評価が最も適切と判断された。また,10月より月1回の頻度で現場試験を実施し,季節ごとの空間換気特性の把握を実施し,非定常法による総合換気測定の技術開発を実施している段階にある。
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