研究概要 |
わが国においては埋め立て処分場が少なくなり、廃棄物の処理処分が大きな社会問題になっている。下水処理場で生じる大量のヘドロ状汚泥、また膨大な量のごみを焼却した後に残る大量の灰も、処理処分が困難になっている問題の一つである。ヘドロ状下水汚泥およびごみ焼却灰から有機物を除去した残渣はSiO_2-CaO-Al_2O_3-Fe_2O_3系を主成分とした無機物質であり、のセラミックスあるいはガラスの原料となり得る。得られるガラスあるいはガラスセラミックスの色の調整および長期にわたる化学的耐久性は再利用のため重要である。これらの廃棄物を熔融冷却して得られたガラスは強く着色していた。着色の原因は、炭素、シリコン、あるいは金属鉄が非常に細かい粒子としてガラス中に均一に分散しているためであると推定した。 不透明粒子がガラス中に分散している場合の光吸収係数の計算機シミュレーションにより、化学分析の精度以下の量であっても100nm程度の微粒子であれば吸収係数が非常に大きくなり完全に不透明になり得ることを明らかにした。またpHが3,7,10の水溶液中でのガラスの溶出試験を行ない、溶出量をICPで分析した。その結果、下水汚泥を原料とするガラスの化学的耐久性はpHが7,10では一般の窓ガラスと同じ程度であるが、pHが3の酸性領域ではやや悪いことがわかった。 これらのスラグガラスをより強度の大きい結晶化ガラスにするために適当な結晶核形成前の探索を行なった。スラグガラスと同じ化学組織で、それに種々の成分を少量添加した組成のガラスを化学試薬から調製し、熱処理して結晶化させた。析出結晶化物の断面の顕微鏡観察を行なった。その結果、TiO_2,ZrO_2はガラスの主要成分となるため核形成に寄与しないが、硫化物が核形成速度を促進することを見いだした。硫化物を加えることにより、FeSの微結晶が析出し、それが主結晶相の核形成剤になることがわかった。
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