研究概要 |
本研究は複素V(z)曲線解析法による材料表面の局所領域における弾性係数の分布を測定する超音波顕微鏡システムを確立し,さらに材料の損傷状態との関連を考察することを目的としている. 材料表面を走査しながら表面波の強度および位相の検出を行い,材料表面の反射係数さらに解析により材料の弾性係数を測定することの可能な装置およびソフトウェアを作成した.標準試料として溶融石英および数種の異なる弾性係数を有するガラス試料にて装置および解析プログラムの動作確認を行った.試料表面の温度状態が測定に影響するために走査速度および解析速度と同期を取りつつ,負荷装置の動作をできるだけ高速に行う必要性のあることが判明した.そこで現在,負荷装置の制御を含めた測定システムを改良し測定の高速化を試みている. 測定に適した音響レンズの検討を行った.従来から超音波画像用に用いられているFresnelパラメータが1付近の音響レンズでは縦波,横波および表面波が試料によっては同時に測定できないことが解析および実験から明らかにした.従来のレンズで精度よく測定するためにはカップラを水だけでなく,水銀をも使用することが望ましい.これは試料とカップラの音響インピーダンスとの関係で定まることを明らかにした.ただし,高い精度で測定を行うには複素V(z)曲線解析法に適したレンズを新たに製作する必要があり,現在,数値シミュレーション結果に基づいて設計中である. 来年度では,さらに試料の異方性弾性係数を測定するにあたっての問題点を検討する必要性がある.
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