研究概要 |
本研究は,複素V(z)曲線解析法による材料表面の局所領域における弾性係数の分布を測定する超音波顕微鏡システムを確立し,さらに材料の損傷状態との関連を考察することを目的としている. まず,精度の良い測定結果を得るために,数値シミュレーションに基づいて,位相検出型超音波顕微鏡を用いた複素V(z)曲線解析法に適した音響レンズの特性について検討した.そして,その音響レンズを用いて標準試料(高純度の溶融石英)および3種類のガラス試料を用いた波動伝ぱ速度の測定を行うことにより位相検出型超音波顕微鏡に適した音響レンズの条件を調べた.その結果,音響レンズの伝達関数が,規格化波数に対して振幅が大きく,勾配が小さいレンズが,反射関数の振幅に波動の臨界角が現れる縦波および横波の計測に適していることがわかった.またそのレンズを用いた場合,反射関数の位相に波動の臨界角が現れるRayleigh波の伝ぱ速度の測定結果の標準偏差は小さくなり,Rayleigh波の測定誤差に関係していることがわかった.縦波および横波の測定誤差に与えるパラメータについて検討中である. 次に測定システムでは,材料の直径10mm程度の領域における波動伝ぱ速度を測定し,走査テーブルを精度良く制御するためのプログラムを開発し,効率的な測定システムの構築を試みたところ,波動伝ぱ速度の約0.2%程度の誤差で測定可能であることがわかった.さらに弾性係数の測定における測定誤差の検討を行うとともに,波動伝ぱ速度の測定精度の向上を検討中である. 来年度では,さらに均質等方性材料の弾性係数および薄膜構造材料など波動伝ぱ挙動が複雑な材料の弾性係数を精度良く,測定するにあたっての問題点を検討する必要がある.
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