研究概要 |
破壊事故の大部分は疲労が原因といわれており,そしてそれは,通常部材表面に発生したき裂が成長して起こる.そこで表面に発生したき裂の伝ぱの管理システムが重要となる.本課題の目的は1)き裂開口形状がき裂伝ぱ速度を評価する尺度として有効であることを示すことおよび2)走査型レーザ顕微鏡を用いたき裂開口形状の測定システムの開発である.本年度の成果は以下のとおりである. 1)に関して S45C熱処理材の回転曲げおよびねじり疲労試験を行い,き裂開口形状とき裂伝ぱ速度の関係を調べた結果,負荷形式にかかわらず,き裂伝ぱ速度が同じであればき裂開口形状もほぼ同じであること,調質材の開口量は焼きなまし材のそれに較べ相当小さいことが明らかになった.また,パ-ライト系球状黒鉛鋳鉄とその基地と同等の材質の共析鋼の引張圧縮疲労試験を行った結果,球状黒鉛鋳鉄のき裂伝ぱ速度が大であり,それはき裂開口量が大であることによることが分かった. 2)に関して 走査型レーザ顕微鏡その場観察システムを構築し,シリコン鉄単結晶薄板試験片の疲労き裂を動的その場観察し,システムの性能を確認した.試験機は通常のたて型の電気油圧サーボ式引張圧縮疲労試験機を用い,顕微鏡と試験機は分離したシステムである.走査型レーザ顕微鏡の走査速度は1画面1/30秒が可能なので,動的観察および環境振動下の観察共に,走査時間が無視できる範囲で,リアルタイムの観察が可能である.観察の結果,本研究の目的に対しては十分な性能を有することが分かった.高周波の環境振動は有害であるが,顕微鏡を防振台に載せることで除去できた.除振対策としては,今後顕微鏡を直接試験機フレームに装着することを検討する.またリアルタイム観察時にき裂の上下動が問題となるが,追従装置を開発中である.
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